<河童 その2>
  子供の頃の思い出に、忘れられない河童の話がある。
母や叔母に確認すると、今でも「そうねぇ!雨の日はよく聞こえたわねぇ」という。
河童の鳴き声である。
母や叔母が小さい頃から「あれは河童の声」と聞かされて育ち、それを誰も確認しないで信じていたという・・・。


九州の田舎の話である。

それは梅雨時の雨の夜・・・雨も激しい雨の日ではない。
蒸し暑く しとしと;;;と降る雨の夜と決まっている。

疎開していた頃住んでいた家は、山の中のお粗末な小屋であった。
片方に竹の山、片方は畑やお隣さん。家がぽつぽつ建っている寂しい環境だ!
我が家から徒歩3分くらいの所にタバコ畑があり、そのタバコ畑の横に2m位の山道があった。

しとしと;;;と雨の降る夜(午後8時過ぎだと思う)になると、タバコ畑の山道の方から「ぴゅ〜ぴゅ〜る〜ぴゅ〜ぴゅる〜ぴゅ〜〜〜ぴゅる〜」と、
何とも哀しげな鳴き声が聞こえてくるのである。
母や兄や周りの大人たちが、「ほら!河童が通る、河童の引越しが始まった」という。

「河童は お天気の日には頭のお皿が乾くので、雨の日しか行動しない」とか。

その田舎には あちらこちらに池があった。
自然の池や農業用水のため池である。 河童は一つの池で暫く暮らして、
食べ物がなくなると次の池へ引っ越すのだそうだ〜

ぴゅ〜ぴゅるるる〜〜〜ぴゅ〜〜〜・・・河童の鳴き声!

最近
母が「何かの鳥が山の方に鳴きながら飛んで行ったのを、昔の人が子供におもしろおかしく話たのでは?」というが、
雨の8時過ぎの夜に果たして鳥が飛ぶだろうか?
 
今でも雨がしとしと降る夜は、その河童の鳴き声と話を思い出す。
子供の頃の「不思議な思い出」である。